先日浄土平に行ったばかりでしたが,翌週も晴れる予報&星欲が爆発しそうということで深城ダムに行きました.
今年に入ってから ε-160ED を自宅の肥やしにしていた気がします.ぐらすのすち氏が「深城ダムに行く,北はそれなりに暗いぞ」と言うので,カシオペヤやケフェウスの淡物を狙うのにも明るい ε は尚更都合がいいと考えて自分も深城ダムへ.

日の入り前に到着してのんびり撮影.途中ガイドが流れたりもしましたがメイン鏡筒との平行を出してキャリブレーションし直したりしつつ 5.5 時間程度のライトフレームを撮りました.

さて,自分が ε で画像処理する際にちょくちょく発生する問題があります.フラットを撮ってインテグレーションすると度々マスターライトの下に強烈なグラデーションが発生するのです.

自分は原則フラット撮らないおじさんなのですが,それは TOA130NS + 645 フラットナー + APS-C だったり FSQ-80FC + APS-C だったり十分な周辺光量がある場合のみであって,ε のような比較的周辺減光のある場合はフラットを撮るようにしています.そんなこんなで帰宅してから WBPP でインテグレーションしてみると上のような画像が出てきて今回も全然ダメ.流石に長いこと悩まされていたので,ちゃんと原因を探ることにしました.
これまでわかっていたこと:
・ε でフラットをあてた場合にのみ発生する.出ないこともある(2/3 くらいの確率)
・カメラの回転に関係なく必ず画像の下側長辺が明るくなるという形で発生する(光害は無関係)
・フラットの露光時間を1秒程度に伸ばしても発生する(光源のフリッカーではなさそう)
・マスターフラットを強調してもグラデーションは見えてこない
・単一のライト,フラットを強調してもグラデーションは見えてこず,マスターライトの Rejection high 等のフレームを強調するとそこにだけ出ている
これらの情報から光学系(望遠鏡かカメラ)か画像処理に要因があると考えました.漏光がありそうな接眼部あたりを簡単に遮光しフラットを自宅で撮り直しても発生したので,ここで原因は画像処理にあると推測しいろいろ条件を変えてインテグレーションしたところ,Fast Integration では出ない→Local Normalization (LN) を切ると出ないということまで特定しました.
では LN のパラメタ値設定に問題があるのかと思いかけましたが,そもそも LN ってどんな処理だったっけ?と検索したところ Gemini 曰く「明るさ・背景レベルの均一化: 撮影中の雲の通過、気候の変化、光害などによって生じるコマごとの背景や輝度のムラを合わせます.」「局所的な補正: 全体を一律に補正する(LinearFitなど)のではなく、画像を小さなブロック(局所的)に分割して比較・補正するため,複雑なグラデーションにも対応できます.」とのこと.うん,確かにこの処理は怪しそうです.
ここで一つ心当たりを思い出しました.Overscan area です.CMOS カメラには Overscan area や Optical black area という,出てくる画に直接関与しない画像処理のための有効画素外の余白領域があります.普通は撮影時点でこれを除外した有効領域のみをデータとして保存すると思うのですが,自分は過去にバイアスやダークを撮った時からこの領域を含めて撮影していて,撮り直すこともめんどくさがってライトやフラットも Overscan area を含めて撮影していたのです.Overscan area は画像の下側に数十行程度存在するので,この部分がフラット→LN と処理を進めたときに強いムラと勘違いされて誤って補正された結果強烈なグラデーションが生じたと考えれば説明がつきます.

というわけで QHY268C の Overscan 設定を調べて無視してもらうように WBPP に入力.結果としてはドンピシャで,あれだけキツく出ていたグラデーションが綺麗サッパリ出なくなり膝から崩れ落ちました.Local Normalization は設定しないと個別の画像が出てこないハズなので特定が難しく,なかなか気づきにくかったというのはありますが,いかにも光学系要因みたいな見た目をしておきながらこんな(しょうもない)理由だったんかい…….

画像全体のムラは残っていますが今は MGC 等の便利な補正ツールもあるので,組み合わせることで十分な画像処理ができるようになりました.

※HDR 天体写真のため HDR 対応モニター(スマホ等)でご覧ください.
2026年10月17日20時3分~ 山梨県深城ダム
ε-160ED
QHY268PH C
Gain 26/Offset 50/-20℃/180s*110
PlayerOne Anti-Halo UV/IR Cut 2''
Total: 330min
タカハシ EM-200 TemmaPC Jr. + MGEN-3
Adobe Photoshop CC / PixInsight. without AI tools
AstroBin
5.5時間露光の淡物なのでこれくらいの処理で…最近は星雲だけでなく星が綺麗に見えるような画像処理を心がけています.
SDR だと星雲の階調が無理しすぎてるな…まだまだだなという気持ちになりますが,HDR 表示にすると星がぐっと明るくなって立体感が描写され,暗い部分の階調が相対的にあまり気にならなくなる気がしています.自己肯定感を上げるためにも HDR 天体写真は良いのかもしれない.
まさかの Overscan area という自分以外誰も設定していないような要素が原因だったので相変わらず誰の役に立つのかという記事ですが,ひとまず解決してよかった…
それでは.